僕のピアニッシモ 7



















僕のピアニッシモ・表紙

















『仕事が終わったら、飛んで行きます』

ユノからのメールを見て、思わず笑みを溢した。
僕らは恋人の仲に戻った。
本当は、これからもずっと一緒に居たい。
僕が気持ちを伝えると、ユノは笑って言った。

『俺、先生と別れたつもりなんてなかったですよ。ヘコんでて会いに来れませんでしたけど』
『ごめん……』
『もういいです。今、凄く幸せだから』

視力を取り戻したあの日以来、僕は幸せな時間を噛みしめながら、穏やかに過ごしている。
昼食を運んできた看護師が、携帯を持っている僕を見て言った。

「ユノくんとメール?」
「はい」
「幸せそうでいいわね」

看護師の彼女とは、よく雑談をする。

「そういえば私、あなたに隠し事してることがあってね……」
「隠してること……?」

彼女が僕に打ち明けたのは、ユノの事だった。
僕がユノに別れを告げたあの日から数日後、彼女は院内でユノを見かけて声をかけたらしい。

『こんにちは。今日はもう、先生に会いに行ったの?』
『…………』
『ユノくん?』
『あの……先生の手術、成功しますよね?』
『え……』
『成功します、絶対に。だから、わざわざ会いに行って心配する必要は無いんです』

その後何度も病院へ来ては、僕を遠くから見つめていたという。
あの頃僕は、一人なんかじゃなかった。
ずっと、ユノが側に居てくれたんだ。

「本当は、言わないでって言われてたんだけど……彼には内緒にして」
「ありがとうございます。大切なこと、知らないままでいるところでした」
「何があったか分からないけど、あんなにいい子苛めちゃ駄目よ先生」
「はい……」

彼女はにっこり笑うと、部屋から出ていった。
こんなにも尽くしてくれるユノに、僕が出来ることは何だろう。
僕も君を愛してる。ずっとずっと大切にしたい。
この想いを、行動でちゃんと伝えていこう。
ピアノへ向き合う時の様に、真っ直ぐ、素直な気持ちのまま……











「僕、家へ戻ろうかと思うんだ。定期受診はあるけど、もう此処に入院している必要は無いし」
「そっか」

ユノは、冗談っぽく笑って言った。

「じゃあ俺、先生の所へ居座ろうかな」

僕は勇気を出して、思っていた事を提案してみた。

「その事なんだけど、ユノが良かったら……一緒に暮らさないか?あの家広すぎて、一人じゃちょっと……」
「え……」

ユノは目を真ん丸に開いて固まった後、痛い程の力で僕を抱きしめた。

「嬉しい、先生!」
「い、いいのか……?」
「勿論だよ」

喜ぶユノを見て嬉しさが込み上げ、僕もユノを思いきり抱き締めた。











退院の日、僕はユノの車に乗せてもらい屋敷へ向かった。
以前からこの街に住んでいたというのに、目に映るのは全く知らない景色ばかり。
まるで他の土地へやってきたかのような、不思議な感覚だ。
窓から見える街並に夢中になっているうちに、屋敷へ到着した。
洋館風の三階建の屋敷は、広い庭に囲まれている。
その豪華さには、僕もユノも驚いた。
入って右手にあるのは、広々とした演奏スペース。
何畳分もある部屋の真ん中に、ひとつだけグランドピアノが置かれている。
音の通りが良いように、三階まで吹き抜けになっている。
家もピアノも暫く使っていなかったが、雇っている家政婦が定期的に掃除をしてくれているので、綺麗な状態に保たれていた。

「ユノ、一緒に弾こうか。ピアノ」
「俺、弾けるかな」
「大丈夫さ」

僕らは、ピアノの前へ並んで座った。
鍵盤の蓋を開くと、独特の匂いがふわりと薫った。

「昔教えただろう、連弾」
「愛の夢……?」
「そう」

教師時代、リストの愛の夢をユノとよく連弾した。
右手ならば比較的簡単だから、ピアノを弾きたいと言ったユノに僕が教えたのだ。
昔と同じように、僕は左手を、ユノは右手のメロディーラインをたどたどしく弾いた。

「そう、上手いよ」
「凄い、先生……俺の指ちゃんと覚えてた」
「うん。その調子」

ユノの指は段々とスムーズに動くようになり、綺麗な戦慄が家の中に響き渡った。


別れの曲は、もう弾かない。
これからは、二人一緒に僕らだけの音色を生み出してゆく。
いつまでも、ずっと。










◇◇◇



コメント、拍手とも、沢山ありがとうございますm(._.)m
ご覧頂き感謝申しあげます。
コメまだ返していないものは、今週中にお返しします。
大変遅れまして、申し訳ありません(;_;)

愛の夢第三番は、昔ピアノを習っていた頃に弾きました。
ノクターンと同じくらい好きな曲です♪

エッチまでたどり着けませんでした……
最終回に持ち越し。
期待させてすいません~





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2 Comments

NB  

ちゃー○んさま

★ちゃー○んさま

いらっしゃいませ♡

はい、最近どエロばかり書いていたので初心に戻ってみました(笑)
秋に似合う切な甘系のお話になったかしら……

全然文上手くないですが、ありがとうございます!
どエロい話も切ない話も、沢山書いて極めていきたいと思います(^^)

2014/10/31 (Fri) 22:40 | EDIT | REPLY |   

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2014/10/30 (Thu) 08:10 | EDIT | REPLY |   

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