僕のピアニッシモ 2



















僕のピアニッシモ・表紙

















「ユノ、歌が上手いね」
「そうかな」
「感情を込めて歌ったら、もっと上手になる。そのメロディーに自分なりのイメージを持ってごらん」

その言葉を聞いて、いつも瞳を閉じて歌っている先生は、心を込めているのだと思った。
俺も心を込めるつもりで、胸に手を当てて目を瞑ってみた。
先生の伴奏にのせてそっと歌い始めると、先生も歌い始めた。
夕暮れの音楽室に、緩やかな伴奏と綺麗なハーモニーが響いていた。









「何で……今更……」

目が覚めた後も、直前まで見ていた夢が頭の中に鮮明に残っていた。
夢は殆どが過去の回想だった。
何故今になって、あんなにも昔の事を思い出したのか。
夢の中の先生の顔が、声が頭を過る。
もう何とも無くなったと思っていた失恋の傷痕が、微かに疼くのを感じた。









「じゃあ、そろそろ帰るよ」
「ああ。ありがとな」

友人の見舞いを終え、病室から出て帰ろうとした時だった。
突き当たりの奥の病室から、昔よく聞いていたある曲が聞こえてきた。

「ショパンだ……」

忘れもしない。
先生が好きだと言って、当時よく弾いていた。
気が付いたら俺は、ピアノの音に引き寄せられるように、奥の病室へ向かって歩いていた。


病室の前まで辿り着くと、そっと中を覗き込んだ。
部屋の隅に置かれたコンポから、ノクターンの綺麗な戦慄が流れている。
広い部屋の中、置かれたベッドは窓際にあるひとつだけ。
その横にある車椅子に、一人の男性が腰かけている。
窓の方を向いているので、俺からは背中しか見えなかった。
しかしその背中は、昔よく音楽室で目にしたあの背中と驚く程ぴったりと重なった。
俺は、確信した。

「シム先生……?」

声をかけると、男性はゆっくりと振り返った。
大きな目。少し特徴的な唇。
中性的な顔立ちのその人は、先生に違い無かった。

「先生……。やっぱり、先生ですよね?」

久しい再会に嬉しさが込み上げ、駆け寄った俺だったが、先生の態度は俺と対称的だった。

「……誰、ですか?」

小さな声で、先生はぼそりと呟いた。
どこか一点を見つめたまま、なかなか俺を見ようとしない。

「先生……俺の事、忘れたの?」

俺の問いに、先生は一点を見つめたまま返した。

「すいません……。目が、見えないんです」
「え…………」
「どなたですか?」

先生の言葉に驚き、俺は返事をするのを忘れた。
俺が知らないうちに、先生は視力を失ってしまっていた。
合うことのない視線に切なさを覚えつつも、俺は先生の前まで行くと、その細い手にそっと触れた。

「チョン・ユンホです。中学の頃、音楽室でよく一緒に遊んでくださいました。覚えていますか?」

先生の瞳がゆらりと揺れて、少し大きくなった。

「……ユノ、なのか?」
「そうです。覚えてくれていたんですね」
「当たり前だ。忘れる訳ない」

俺の手に、先生の手が重ねられた。

「久しぶりだな、ユノ」

最後に会った時より10年以上歳を重ねたからか、頬は痩せて少し皺もある。
それでも、ふわりと笑うその顔は変わらず綺麗だった。

「お会い出来て嬉しいです、先生……」






あの初恋は枯れてしまったと思っていたが、眠り続けていたのかもしれない。
今日、この日のために。
微笑む先生を前に、あの頃抱いていた感情が甦えるのを、俺は確かに感じた。









◇◇◇


非変態ひさびさなので、何だか新鮮……

目が見えないとか、重い設定で申し訳ありません。

だけどNBはハッピーでピースフル主義ですよ~(´ω`)




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6 Comments

NB  

さえ○んさま

★さえ○んさま

こんにちは!
そうです。新しいお話はさえ○んさまのリクエストでございます。
注意書きに変態度を書くサイトもきっとなかなか無いですね(^_^;)
切ない系はhumanoid以降あまり書いていなかったので、久しぶりです。
コメ返遅いために、もう最終回は終わってしまいましたが……どうでしたか?
私は、自分ではなかなか考えない設定を頂いて、楽しみながら書かせて頂きました。

35歳チャンミン……このお話は受け受けしいですが、実際の35歳チャンミンはきっと格好良いだろうなと思います♡
いやいや、どうでもよくないですよ~!年齢設定大事です。
私も、24のユノかぁ……私と……とか思いながら書きました(^^)笑

Humanoidについて、ご意見ありがとうございます。
さえ○んさま……なんだか、感動です。
私よりもずっと作品の事を考えて、大切にしてくださって、その様にに言って頂けた事が嬉しく思います。
もう少し頑張って見て、最後まで作品をupするかどうかしっかり検討致します。
本当にありがとうございます!

チャンミンのセリフ使わせて頂きました♡
さえ○んさまのおかげで、可愛く見えるようになりましたよ~(*´ω`*)

ユノの髪は私もちょっとだけ残念でした……(笑)
いえいえ、いつも暖かい素敵な長文をありがとうございます。
またお待ちしてます♡

2014/11/01 (Sat) 06:47 | EDIT | REPLY |   

NB  

ゆか○ろうさま

★ゆか○ろうさま

コメントありがとうございます♪
確かに……ずっと変態続きで夏から抜けきれない感じでしたね(笑)
秋に似合うような、切なくあまいお話になればと思います。

泣くシーンあるかしら……
humanoid本編よりはソフトだと思いますが、ちょっとでも感動を味わって頂けるように頑張ります(^^)

2014/10/26 (Sun) 12:14 | EDIT | REPLY |   

NB  

ちゃー○んさま

★ちゃー○んさま

こんにちは!
コメントありがとうございます(^^)

変態、非変態とも受け入れてくださり嬉しいです。
久々のエロ無しの切ない系、書いてて楽しいです。

いや……訂正、最後はやっぱり……あるかなぁ
うーん、未定です♡

2014/10/26 (Sun) 12:11 | EDIT | REPLY |   

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2014/10/24 (Fri) 23:20 | EDIT | REPLY |   

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2014/10/24 (Fri) 17:34 | EDIT | REPLY |   

ゆかたろう  

なんだか 深まる秋に お似合いな お話が
始まりましたね
あんまり アタシを 泣かせない様
お手柔らかに お願いよぉ~♡

2014/10/24 (Fri) 15:27 | EDIT | REPLY |   

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