ROCK YOU 9

















ROCKYOU修正
















ユノさんは今、大学の寮の空き部屋を使っている。
寮ならば廊下に監視カメラが付いているし、定期的な巡回もある。
アパートより安全ではあるが、犯人が身近に潜んでいる可能性を考えるとまだまだ警戒が必要だ。

「何コレ」

ユノさんは、俺が掌に握らせた機器を見て言った。

「盗聴妨害器。持っといて」
「これお前が買ったのか?」
「はい」

実を言うと一ヶ月分のバイト代を使った。
本格的な防犯グッズは、やはり値の張るものしか無かった。
ユノさんのために、何のためらいもなくバイトの給料を使いきった自分に驚いた。

「いくらだよ」
「金のことはいいです」
「よくない。払う」
「いいってば」

金は要らないと断り続けたが、ユノさんが引く気配は無かった。
結局、今後俺も使う機会があるだろうからと何とか説得して、全額払うつもりだったユノさんには半額分払って貰う事になった。
その後ユノさんから新たな嫌がらせの報告も無く、ユノさんのアパートに行っても郵便受けに入っているのはチラシくらいで、他には何も届いていなかった。









それはある晩の事だった。
ユノさんの寮に行って二人で夕飯を食べていると、ユノさんが言った。

「……お前、最近元気か」
「は?」
「元気にやってるかって聞いたんだよ」
「まぁ……元気ですけど」
「そっか。ならいい」

何なんだ。
質問の内容も唐突だし、ユノさんがいつもより浮かない顔をしていて違和感を覚えた。
そして俺は、ユノさんが次に発した一言で悟った。
ユノさんに、また何かあったのだと。

「俺達、暫く会わないことにしないか?」
「は?」
「もうすぐテストだろ。俺に構って貰ってばっかじゃわるい」
「俺、要領いい方なんでテストは問題ありませんけど」
「はは、余程自信あるんだな」

俺は箸を置いてユノさんを見つめた。

「何かあったなら隠さず言って」
「…………」
「俺に関わる事ですか?だとすれば隠された方が困る。知らずに、何の対策もしないままの方が危険でしょ」

ユノさんは暫く無言のままだったが、立ち上がるとキャビネットを開け一枚の写真を取り出した。
テーブルの上に置かれたそれを見て、俺は言葉を失った。
写真にはユノさんと俺が写っている。
俺の肩を組むユノさんと、少し照れて笑っている俺。
その真ん中に、恐らくナイフか何かの凶器で突き刺したような跡がついている。
強い力で突き刺したのか、深くめり込んだのが分かる荒々しい跡だった。

「これ、朝にこの部屋の郵便受けに入ってた。狙われてんのはもう、俺だけじゃないかもしれない」
「この部屋に?」
「ああ」
「そんな……ここに入れる人間なんて……」

学生か、関係者しか考えられない。
しかし奇妙な事に、ユノさんは監視カメラをチェックしたがそれらしい人物は確認出来なかったという。

「何かしら細工されたのかもしれない。今はまだ特定出来ないけど……あとは俺一人で何とかする。犯人に目つけられる前に、お前は手を引け」
「嫌です」
「チャンミン、解れよ」
「嫌だ」

犯人が常に近くにいる。
そんな危険な状況に居るユノさんを、ただ見ているなんて出来ない。

「この写真の意味考えろよ。俺の傍は危ないんだ」
「そんなの最初から解ってる」

一向に引かない俺に、ユノさんは低い声で言い放った。

「じゃあ……言い方を変える。これは俺一人でも十分解決出来る問題だ。お前の助けは必要無い」

ユノさんは俺の身を案じて、俺を遠ざけるために言ったのだと解った。
それでも、揺るがない瞳に強い決心を感じた俺は、それ以上何も言い返す事が出来なかった。
喧嘩なら、俺よりユノさんの方が遥かに強い。
出来る事は、一緒に考えて方法を提案するくらいだ。
今の俺の力を考えると、それでも助けさせろなんて言えなかった。





一気にビールを飲み干すと、微かに余った白い泡がジョッキの底に落ちていった。
地下のグラブで一人、ボンヤリと考えていた。
俺はユノさんを何だと思っていたのだろう。
放っておけなくて、構った時にありがとうと笑って貰えるのが嬉しかった。
まるで、いつも女の子を好きになる時のような感覚でユノさんを見ていた気がする。
だけどユノさんは男で、俺よりずっと男らしい。
近付きたい。傍に居たいのに、同姓という壁が苦しい。
無力な自分を悔しく思う。
こんな風に思うなんて、尊敬する先輩だとかそんな域を越えてる。
そう、この思いは…………



その時、背後から聞き覚えのある声がした。











人気ブログランキングへ

にほんブログ村 二次BL小説

スポンサーサイト

1 Comments

-  

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2014/08/13 (Wed) 00:40 | EDIT | REPLY |   

Leave a comment