ロスト バージン 6


















ロストバージン・表紙

















バーを訪れたその人は、作り物みたいに整った顔をしていた。
男に興味を持った事なんて無かったけど、対応をしている最中、綺麗なその顔に見とれてしまう瞬間があった。

「俺は神様じゃない。何でこうなった。何でだ」

その言葉を聞いても、一体彼に何があったのか見当もつかなかった。
もしかしたら、重圧に耐えかねるような辛い事があったのかも知れない。
そう思って静かに見守っていた。
それ以来、彼がバーに現れる事は無かった。
あの後、彼はどうなったのだろう。
今は元気に暮らしているのだろうか。
たった一度会っただけ。
沢山いる客の中の一人に過ぎないその人を、ろくに言葉も交わさなかったのに俺は忘れる事ができなかった。
もしかすると、彼に惹かれてしまったのだろうか……?
彼の事を毎日考えているうちに、何時しかそう思うようになっていた。









「ドクターのチョン・ユンホです。宜しく」
「……シム・チャンミンです」

まさか、就職先で再会するなんて。
目の前で自己紹介をする彼は、俺が忘れられなかったあの人に違いなかった。
再会出来た事に喜びを感じて、俺はやっぱりこの人が好きなんだと自覚した。
バーでの一件もあり、入職したその日に直ぐ解った。
彼は、病院という組織の中でまるで人じゃないみたいに扱われている。
勇気が要る行動だったけど、俺は物怖じせず対等に彼に接するようにした。
解ってるよ。
あなたは神様なんかじゃなくて、僕らと同じ人間だって。
今持っている実力は、努力を積み重ねて得た結果だと解ってる。
俺なりの、彼へのメッセージだった。
それから先生とはよく言い合いになりつつも、それなりに打ち解けていった。



あの日、先生に抱かせろと迫られた瞬間は本当にどうにかなってしまいそうだった。
今までに感じたことのない緊張感と胸の高鳴りに、クラクラした。
でも、先生からしたら俺は一晩限りのただの遊び相手。
そう思うと、切なさが込み上げてきて泣きたくなった。
それでもいい。
今夜この記憶を心と身体に刻もう。
この恋は叶わないけれど、先生に抱かれた思い出を宝物にして、これからも歩いていける。
そう思ったから、痛い思いをする覚悟で先生に全てを委ねた。






「男の身体で遊ぶなんて、だらしない趣味だな……」

この想いは秘めたまま、今までの関係を続ける。
そう思っていたけど、先生の言葉が余りにもショックで、感情的になった俺は気持ちを全てさらけ出してしまった。
もう終わりだと絶望的に思ったのに、想いを伝えた結果がまさかこんな事になるなんて。

「俺も、お前が好きだよ」

先生は、俺を想ってくれていた。

「どうしよう……。俺……俺、嬉しすぎて心臓止まりそうっ……」

先生は俺を幸せにしてくれたけど、やっぱり神様なんかじゃない。
その日から、俺の大切な大切な恋人になった。









「上がれよ。ちょっと汚いけど」

告白し合った日の夜、俺は先生のアパートに招かれた。
先生の部屋は汚いというより、物が多くて整理されていないといった感じだった。
部屋のあちこちに、いくつも段ボールが置かれている。

「最近引っ越したんだ。転勤前から借りてたマンションにずっと住んたんだけど流石に遠くてな。新しいとこ見つかるまで、ここは繋ぎみたいなもん」

ソファの上の物を雑に退けると、先生は座れと空いたスペースを叩いた。

「失礼します」

腰を下ろすと、すぐ横に先生も座った。
先生は俺の肩を抱き、甘ったるい笑みを浮かべて言った。

「新しく住むとこは広めの方がいいか。お前が好きな時に来て過ごせるように」

それは凄く嬉しい提案だったけど、俺は正直な気持ちを伝えた。

「別に広くなくて良い。その方が先生とくっつけるし」
「……お前って、結構大胆だよな」
「控えめな方が好みですか」
「いいよ。今のままで」

先生は、唇が触れ合うような優しいキスをした。

「先生……酔ってなくとも、俺の事抱いてくれる?」
「当たり前だろ」

先生は、俺の身体をソファへそっと横たえた。

「愛してるよ、チャンミン」

甘い囁きが麻酔のように心と身体を支配する。
先生という深みにはまり、どんどん餐まれていくような感じがした。
もう息も出来ない位、溺れさせて欲しい。
このままずっと……

「俺も……俺も愛してる。先生」

先生の顔を引き寄せると、俺は再び目を閉じた。
幸せな時間が、またやってくる。









◇◇◇



なんだかUPしてみたら拍手数とか凄くてビックリしました……
コメントもたくさん。
ありがとうございます!
こんな頂いていいのでしょうか?
嬉しいけど恐れ多いなぁ~
みなさま、猛暑で大変ですがお身体に気を付けてくださいね。

もう1話でロスト バージンは終わりです。
以外と長くなりました。





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2 Comments

NB  

ちゃ○さま

★ちゃ○さま

ちゃ○さま、blogお休みされるのですか・・・・・・残念です。
サイトによって対処方法が違うんですね。
アメブロ使ってらっしゃる方大変ですね。

小説のタイプは書き手によって向き不向きあると思ってます。
私はあまりギャグっぽいのは書けないのですごいなと思います。

ご自分が書きたいと思っているなら、続けてもいいんじゃないかな?
このサイトも完全に私の自己満足のようなものですよー!

2014/08/10 (Sun) 22:13 | EDIT | REPLY |   

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2014/08/09 (Sat) 15:35 | EDIT | REPLY |   

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