Humanoid ~君のための一歩~ 2



「コーヒーどうぞ」
「ありがとう」

礼を言うと、彼女はにっこりと微笑んだ。
心なしか顔が赤い気がする。
熱でもあるんだろうか。

「体調大丈夫?」
「え……?は、はい」

気遣ったつもりだったが不思議そうな顔をされた。
僕、何か変な事言ったかな。



「あははっ」
「何がそんな可笑しいんだよ」

休憩時間になり、僕は同僚と食堂で昼食を取っていた。
目の前で声をあげて笑っているのは同僚のボアだ。
女が苦手な僕が、唯一気兼ねなく話せる。
サバサバして飾らない性格が一緒に居て楽だ。
コーヒーを容れてくれた女の子の話をしたら、なぜか笑われてしまった。

「本当鈍いよね。チャンミン最近格好よくなったでしょ。仲良くしたいのよ」

そういう事だったのか。
本当ならば喜ぶところかもしれないが、僕はゲイだから女に興味が持てない。
それに今はユノが居るから、恋愛に関しては怖いくらい満たされている。

「イメチェンしたのって、恋人ができたからでしょ」

ボアが、僕の薬指にはまったリングを見てにやにやと笑う。

「どんな人?」

ボアにはゲイだという事は話していない。
彼女を信用してない訳じゃないが、打ち明ける必要が特にないのでやはり言いたくなかった。

「別に……いいだろ」
「……ねぇ、知ってる?」

次の瞬間、ボアの発言に僕は言葉を失った。
僕の耳元でそっと囁かれたその言葉は、衝撃的なものだった。

「“シム・チャンミンを、スタイル抜群の超イケメンがお迎えにくる”って、噂になってる……」

何だって。
それはユノの事に違いない。
やっぱり目撃されていた。
全身から、冷や汗が一気に吹き出た。

「律儀に職場まで迎えに来るとか、相当仲が良いのね」
「何が言いたいんだよ」
「男と付き合ってるの?」

直球な質問に怯んだが平静を装った。
ユノ、ごめん。
臆病な僕を許して。

「……ただの友達だよ」

引き下がってくれると思ったのに、ボアは思わぬ方向に話を転換させた。

「本当?だったら紹介して」
「え……?」
「あたし今フリーだから。イケメンでモデルみたいなんて、理想的じゃない」

二人が仲睦まじく並んで歩く様子が、頭に浮かび上がる。
ユノの隣に、僕じゃない誰かが居るだけで息が詰まりそうになる。
嫌だ、嫌だ。
そんなの、絶対嫌だ!

「駄目」
「何でよー、ケチ」

数日前、ユノと会った時の事を思い出した。
僕らの関係にうしろめたい事は何も無い。
好きで付き合ってるだけ。
そう言ってくれた。
臆病な僕を責めずに、優しく包み込んでくれた。
ユノ、僕も強くなれるかな。
ユノを好きだって気持ちを恥じる必要はない。
そうだよね。

「それは出来ない」
「何がそんなに駄目なのよ」
「ユノは……」

頑張れ、僕。

「ユノは僕の……」

頑張るんだ。

「大切な人だからっ……」

ついに言ってしまった。
フリーズしたボアの口から、ポテトがへにゃりと落下した。
大きな声を出してしまったせいで、周りも僕に目を向けている。
なんて事をしてしまったんだろう。
恥ずかしさと後悔でいっぱいになった僕は、テーブルへ突っ伏した。






帰り道、僕はボアの隣をとぼとぼと歩いた。

「ひいただろ」
「ひいてないわよ」

ボアが僕の肩を抱いた。

「元気出せっての。もう割りきりるの。男だろ?あたしはあんたの見方だから」

ボアはにっこりと微笑んだ。
思いきって話して良かったかもしれない。
ボアの力強く頼れるところが好きだ。

「ありがと」
「よし」

ふたりで笑い合ったその時。

「……チャンミン」

聞き覚えのある声が、僕の名前を呼んだ。
前を見ると、切なげに顔を歪めたユノが僕らを見ていた。











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