ROCK YOU 3

  01, 2014 08:06
















ROCKYOU修正
















「おー。チャンミン、歌上手いじゃん」

狭いカラオケボックスに、知り合って間もない男とふたり。
何でこんな事になったんだ。
プライベートスペースというものを知らないのか、テンションが上がったチョン・ユンホは、俺にぐいぐいと身体を寄せてくる。
同じ野郎にくっつかれてもちっとも嬉しくない。
もし今隣にいるのがこいつの妹のミナちゃんなら、どんなに幸せだっただろう。
ウンザリしつつも、半場開き直った俺は、立ち上がって思いきりシャウトした。

「おー、いいね!」

ちっともよくねー!
曲が終わり、脱力した俺はぐったりとソファに座った。
暫くすると、チョン・ユンホが転送した曲が流れ始めた。
聞き覚えのあるイントロだ。

「……ボーイズⅡメン」

ゆったりとした綺麗なメロディーラインも、歌詞もいい。
恋愛を唄ったバラードで、俺の好きな曲だ。
出だしの歌声を聞いて驚いた。
英語の歌詞だけど、歌声が違和感なく耳に入ってくる。
甘く綺麗なファルセットが心地良くて、俺は聞き惚れてしまった。
ぼんやりしているうちに、曲が終わった。

「……あんたも上手いじゃん」
「はは。ありがと」

チョン・ユンホは、頬を赤らめて笑うと、手で顔を覆った。
そんな反応は要らないっての。
顔は綺麗だからそんなにキモくはないが、反応に困るので止めて欲しい。

「好きなんだ、ボーイズⅡメン」

ミナちゃんの影響だろうか。
これだけシスコンなら、妹が好きなものに興味を持ってもおかしくない。

「ミナも好きなんだぜ。昔から俺、ダンスと歌やっててさ。ミナがいっつも真似して、同じもの好きになんの。可愛いだろ」

影響されたのはミナちゃんの方か。
その後ミナちゃんの話題が続いたが、俺は話を聞いていて思った。
意外にも気持ちのベクトルは相互に向いていて、比重も同じ位なんじゃないだろうか。
小さい頃から、ふたり残されて一緒に生きて来たんだから、当たり前か。


カラオケの後は、夕飯を食べて帰る事になった。
何だかんだ付き合わされてるけど、これを乗りきれば本当にミナちゃんと付き合えるのか?
それが出来ないなら、はっきり言って今こいつと居る意味はどこにも無い。
店に入り席に着くと、チョン・ユンホは言った。

「チャンミン、奢ってやるよ」
「え……いいんすか」
「いいよ。付き合わしたから」

話せば話す程、この人が鬼だとか番長だとか言われている事に、不自然さしか感じない。
自分はミナちゃんと関係しているから、優しくされているだけかも知れない。
目の前の顔を眉間にシワを寄せながら見つめていると、携帯のバイブがなった。
チョン・ユンホの携帯だ。

「携鳴ってますけど」
「いいんだよ」
「さっきからずっと鳴ってませんか」
「…………」

チョン・ユンホは溜め息をついて言った。

「イタ電だから」
「イタ電?」
「この時間になるとよくかかってくんだよ。無言だったり、変な声聞こえてきたりすることもある」
「来るようになってどのくらいですか」
「一ヶ月くらいか。着信拒否も出来ない。毎回番号違うし、公衆電話使ってる可能性もあるな」
「それ、大丈夫なんですか」
「よくわかんねーけど、俺大学の委員長とかやってるから、どっかで恨み買ったのかもしんない。仕方ねぇよ」
「警察に言えば?」
「そのうち無くなるだろ」

チョン・ユンホは携帯の電源を切ると、メニューを見始めた。
そのうち無くなるだって?
もう一ヶ月も続いていて、番号を毎回変えてまでしつこく嫌がらせをする奴が、そう簡単に止めるとは思えない。
イタズラじゃない、危険な領域だとは思わないのか。



店を出て別れる間際。
チョン・ユンホが携帯の電源を付けた時だった。
俺は見てしまった。
着信履歴に10件以上、非通知のものや不特定の番号が並んでいるのを。
しかしチョン・ユンホは、特に驚きもせずそれを見た後携帯をしまった。

「じゃあ、またな」
「今の……」
「大丈夫大丈夫。悪い。俺これからちょっと用事あるから」

チョン・ユンホは、そう言うと足早に去って行ってしまった。

「本当に大丈夫かよ……」

遠ざかる背中を見つめながら、俺は呟いた。
この人、放っておいたら危ない気がする。
ミナちゃんを大事にするあまり、自分のことが蔑ろになってないか。



知り合ってまだ数日。
だけど家へ帰った後も、チョン・ユンホをこのまま放っておいていいのか。
馬鹿みたいに、そればかり考えていた。











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