昔、祖父から聞いた。彼らの世代の人造人間といえば、表面はアルミや鋳物等の硬い素材で覆われ、動きはぎこちなく機械的。人間の様に流暢に話すことはできず、不自然さのある人工的な音声で数語話すだけであった。それから数十年。僕が生まれた頃には既に、祖父の時代から大きく進化を遂げた人造人間があちこちに存在していた。その名は"Humanoid"。見掛け、機能ともまるっきり人間と同じで見当がつかない。スラスラと僕らと同じ言...

三月。桜の蕾が開き、街には柔らかい春の匂いが漂い始めた。新しい季節がまた始まろうとしている。だけど僕の心は暗かった。青い空。色付き始めた木々や草花。楽しそうに僕の横を通り過ぎてゆく、家族やカップル。まるで全てに取り残されたような気分だった。「こんにちは。ロボット販売のSwitch plusです」ドアを開けた途端、モニターで誰なのか確認しなかったことを後悔した。訪問はしつこいから、振り切るのが面倒だ。「只今、...

当選の知らせを受けてから数日。例のhumanoidが届く日がやってきた。当選を知った時には面倒なことになったと思ったが、スイッチを付けずに貸し出し期間家に置いておけばいい。そう思っていた。インターホンが鳴りモニターを見ると、僕の身体程あるでっかい段ボールを抱えた配達員が2人立っていた。僕はドアを開けて対応した。「こんにちは。宅配です」「ありがとうございます」「こちらへサインか印鑑をお願い致します」手続きを...

貸し出し期間は一ヶ月。最終日の24時に、ユノ・ユノの電源は自動的に落ちる。試供品のため、一度電源をつけたら最終日まで起動し続けるらしい。もし貸し出し中電源を切る必要があれば、その理由を明確にして会社へ連絡。自宅へ調査が入り、承諾されればオフのためのパスワードを教えて貰える。説明書より。そんな面倒くさい手続きが必要だったとは。僕の部屋は狭い。もういい歳だが、学生が済むような1DKのアパートに住んでいる。...

僕はある会社で雑務のバイトをしている。内容は主に書類整理やコピーだが、人手が足りないと正社員の仕事が回ってくることもある。仕事終わり、部署の主任に呼ばれた。バイトスタッフから正社員にならないかという誘いだった。今回が初めてではない。今までも何度か誘われたが断ってきた。そして、今回も僕は断った。彼は、いい歳してフリーターに甘んじるのかと思ったかもしれない。案の定、呆れたような表情で溜め息をついていた...