僕は何度も恋をする 1

 15, 2016

ジリジリと、頭を割るようなアラームの音で、僕は目を覚ます。そして起き上がると、ボンヤリとした瞳で、机の上に置かれた一冊のノートを捉える。ノートの表紙には『起きたらまず、このノートを見ろ!』と、マジックで太ぶとと書いてある。何だろう・・・・・・?不思議に思いながらノートを開くと、そこには・・・・・・まず始めに。僕は記憶障害だ。X年○月×日、バイクで事故って、頭を打ったのが原因だ。どうやら、事故の前の事も後の事も、...

僕は何度も恋をする 2

 17, 2016

その人は、微笑みながらこちらへ歩いて来る。まるでスローモーションのように、僕はそれを捉える。動揺しまくりなのに、どうしてか視線を離せず、緊張は高まるばかり。目の前まで来ると、整った顔は笑みを深くした。「チャンミナ・・・・・・」「えっと・・・・・・ユノさん」「そうだよ」「こ、こんにちは」「うん。昼休みだから来ちゃった」ユノさんが、慣れた風にカウンター席に腰掛ける。ぼんやり突っ立っていると、母さんが僕に言った。「...

僕は何度も恋をする 3

 20, 2016

―――その出会いは、三年前に遡る。毎朝慌ただしく出勤して、帰宅すると飯を食って寝て終わる。そんな仕事漬けの日々のなか、車やバイクが趣味の俺は、休日ドライブに出かけるのが癒しだった。それまで恋人は居たり居なかったりで、当時は誰とも交際して居なかった。気付けば三十まであと少し。だけど気持ちが割と趣味に向き易い性格なので、特に焦ることも無く、好きなだけ乗り物に時間を費やしていた。所属しているツーリングクラ...

僕は何度も恋をする 4

 23, 2016

あの日―――電話を受けた時の事は、今でも鮮明に思い出せる。『ユノッ・・・・・・チャンミナが、バイクで事故ったって・・・・・!』『え・・・・・・・・・?』『意識無くて重体らしいっ・・・・・・』急にそんなこと言われても、全然信じられなくて・・・・・・取り敢えず落ち着け、落ち着けと自分に必死に言い聞かせた。だけど、頭の中は真っ白だった。チャンミナは、スリップして転倒し、そのままガードレールに衝突したらしい。俺はその頃、三ヶ月間出張で家を...

僕は何度も恋をする 5

 25, 2016

レトロチックなドアを開くと、揺れたベルが俺の訪問を知らせた。「あら、いらっしゃい」「どうも」「チャンミンなら中に居るわよ?どうぞ」「あ・・・・・・はい。お邪魔します」俺が頭を下げると、おばさんはにっこりと笑った。そして、おじさんに一言。「お父さん、ユノ君にお昼」「ん」おじさんも、当然のように準備に取りかかる。「すみません、いつも」「まぁ、余りもんだから」「ありがとうございます」二人とも、いつも快く迎え入...