ロスト バージン 1

昔、どの医者も助からないと口にした親友の命を救った男がいた。親友は、生まれつき心臓の難病を抱えていた。幼いうちに余命宣告され、別れが迫り来る悲しい現実に、親友の家族も俺もただひたすら耐えるしかなかった。しかしある時、一人の医者がオペをしたいと自ら名乗り出た。オペは無事成功し、親友の命は救われた。幼いながらに、親友の命を救った彼の存在に強烈に惹かれたのを今でも覚えている。その日から、俺は医者になる事...

ロスト バージン 2

「なんだ、お前か……」「なんですかその反応。せっかく慰めに来たのに」「いらねぇよ、そんなの」素っ気なくそう返したが、チャンミンは去らずに俺の隣へ並んだ。手刷りに寄りかかり、俺の顔を覗き込みながらチャンミンは言った。「ねぇ、先生」「んー?」「俺、ここで働き始める前に一度、先生に会ってるんですよ」「……嘘つけ」冗談だと思ってそう返したが、チャンミンは以外にも真剣な顔をしていた。「一度看護師を辞めてから、暫...

ロスト バージン 3

「先生、先生ってば」うつ伏せになって意識を飛ばしていると、身体を揺さぶられた。身体の揺れが頭に伝わり、ずきずきと鈍い痛みが走る。のろのろと身体を起こすと、チャンミンが困った顔で俺を見ていた。「店閉まりますよ。帰りましょう」「無理……」「は?」「ここで寝る」アルコールを大量に摂取したせいだろう。身体が怠くて、まったく動ける気がしない。「何言ってんですか。ほら、立って」チャンミンが、俺の肩を抱いて立ち上...

ロスト バージン 4

完全に酔った勢いだった。素面なら、チャンミンに手を出すなんてことは絶対にしなかった。では、酔った状態でチャンミン以外の男が目の前にいたとして、俺は抱こうと思っただろうか。たぶん思えなかっただろう。俺は、チャンミンの容姿も性格も気に入っていたのだ。仕事仲間だとかそんな領域を飛び越えて、愛を求める対象になり得るほど。酔いが正直な気持ちをさらけ出させた。それは、俺自身も今まで気付くことの無かった想いだっ...

ロスト バージン 5

「そんな怖い顔して、どうしたんです」チャンミンは、取り乱す事なく俺を見ている。一方的な自分の想いが虚しい。チャンミンの気持ちを動かすことなんて出来ないのに、俺は意地になっていた。「お前は平気なのか」「平気です。だってあれは遊びでしょ」「遊びで男に脚を開くのかよ」「さぁね。先生には関係ない」男に抱かれる趣味があるっていうのか。俺でなくとも誰でもよかったのか。あの厭らしい姿を、他の男にも見せつけてるの...