恋の方程式

この世で一番カンタンなもの。答えが解りきっているもの。この世で一番厄介なもの。明確な答えが無く、僕を思い煩わせるもの。僕は、この辺では進学校として知れた男子校に通っている、16歳男子だ。進学校といっても、全国的に有名な高校に比べたら随分と劣る。だが、近隣には問題行動防止が主のような高校もある為、僕の通う高校は周辺住民から好感を買っている。では、実際生徒達はどうか。堅っ苦しい決まり事に嫌気がさしてい...

恋の方程式 2

次のテストの結果、順位が良い方が勝者。敗者は勝者の望みを聞く。僕は、クラスメイトの不良、チョンさんとそんな約束をした。次のテストは、七月上旬の第一学期末考査。テスト開始当日まで、もう一ヶ月を切った。物理の授業で、先生が僕を指名した。「―――シム、この問題の答えは?」「はい・・・・・・単位時間当たりに水が与えられる運動量、Mv/t = 1/6×20/(3π) = 10/(9π) [kgm/s^2]=[N]。 反作用でスプリンクラーが受ける力のモーメン...

恋の方程式 3

「あ、タンマタンマ!」通りかかったタクシーを、チョンさんは手を上げて呼び止めた。タクシーに乗り込もうとするチョンさんを、僕は弱々しい声で制止した。「だ、駄目・・・・・・」「あ?」「家まで結構あるのに・・・・・・今、そんなお金、持って無い」電車でひと駅以上ある僕の家まで、タクシーを使ったらきっと5万ウォンは飛ぶ。そんな余裕、僕の財布には今無い。「俺が出すから気にすんな。電車使うよかタクシーの方が楽だろ」「そんな・...

恋の方程式 4

カシャン・・・・・・僕の手から落ちた眼鏡が、あかね色の教室に乾いた音を響かせた。チョンさんはそっと僕の唇を解放し、至近距離のまま笑みを浮かべた。何時もは少しキツめの印象を与える、細い瞳。今は、柔らかく優しく・・・・・・だけど、何かを訴えているように感じる。その瞳に囚われ無抵抗でいると、チョンさんはまた顔を近付けて来た。やっと我に返り、僕はチョンさんの胸を強く押しやった。「な、何するんですか!」取り乱す僕と対照...

恋の方程式 5

告白の直後は、互いに喋らず、身動きもせずに、まるで時が止まったかのようだった。嫌いだとはっきり伝えたうえ、キスされた時にも酷い事を言ったから、チョンさんが驚くのも仕方無い。だけどあれは、よく言う好きの裏返しだった訳で・・・・・・「マジで・・・・・・?」チョンさんの呟きが、沈黙を破った。整った顔は、期待を浮かべながら僕をじっと見つめている。心なんて単純なものだ。恋心を自覚したつい先程から、視線が絡むだけで僕の胸...