ねぇ、センセイ。 1

 04, 2016

僕はいつも、先生を見ている。黒板に向かっている時、僕らに見せる逞しくて男らしい背中。一見クールに見えるけど、笑うとガラリと印象を変える柔らかな笑顔。いつも真っ直ぐで力強い言葉、眼差し・・・・・・先生の全てが、僕は好きだ。だけど、僕にとって先生が特別な存在でも、先生にとっての僕はそうじゃない。沢山居る生徒の中のひとり。ただそれだけ。放課後美術室の窓から、楽しそうにサッカー部の指導をする先生を見るのが好きだ...

ねぇ、センセイ。 2

 05, 2016

沈黙に耐えきれず、僕は先生からスケッチブックを取り返した。「だから言ったのにっ・・・・・・」「シム・・・・・・」「気持ち悪いと思ったでしょう?ごめんなさい。もうしないから」僕は散らかった刷子をかき集め、逃げるようにその場から立ち去った。「あっ、おい」先生は僕を呼び止めようとしたが、後を追って来ることはなかった。先生は僕のクラスの担任だ。それからも毎日顔を合わせていたが、僕は気まずさを引きずったまま、先生との接触を避け...

ねぇ、センセイ。 3

 07, 2016

「シム、先生のことが好きか?」先生は、笑みを浮かべたまま問いかけてくる。誘うような甘い先生の微笑みに、逆らうことは出来ない。「・・・・・・はい」声も、身体も震えた。「先生も、お前が可愛いよ」先生が距離を詰める。「なぁ、キスしようか」僕に顔を寄せて先生は囁いた。真面目で誠実な先生が、僕を求めたことに驚く。でも嬉しく思う気持ちの方が大きい。僕はずっと、先生と触れ合うことを望んでいたから。弧を描く厚い唇に釘付けにな...

ねぇ、センセイ。 4

 08, 2016

「なぁなぁ、聞いた?ミス東帝のソヨン、ユンホに告ったらしいぜ」「マジかよ。んで、どうなったんだ」「あの爽やかーな笑顔で、ばっさり斬って終わりだとさ」「へぇ。まさかの展開で、手出してくれりゃあ面白いのにな」ある男子生徒二人が、そんな会話をしながら僕の横を通り過ぎた。あの日先生は、僕が告白することを求め、キスをしようと自ら誘った。噂によると、女子生徒は綺麗さっぱり振られたようだ。受け入れて貰えた僕は、希望を持...

ねぇ、センセイ。 5

 09, 2016

「おーい。何やってんだぁ、お前ら」声のする方を見ると、ジャージ姿の先生がサッカーボールを抱えて立っていた。先生は笑っていなくて、でも怒っている風でもない。感情は読み取れなかった。先生を見た途端、男子生徒は僕から飛び退いた。焦った様子の男子生徒に、先生は言った。「俺の見間違いだったらすまんが・・・・・・今お前、無理矢理迫ってなかったか?」「う・・・・・・」先生の問いかけに男子生徒は黙り込んだが、暫くしてからぼそ...