高層ビルの屋上に立ち、僕は幾つもの光の粒が浮かび上がる夜の海を見渡した。一流と賞されるこの煌びやかな夜景も、今の僕には色褪せて見える。男娼達が硝子越しに眺める、最早お決まりの風景。悲しい運命を生きる男達の、庭の様だと思う。男でありながら、女の格好をして客を接待する。そんな風変わりな店で、僕はフロアのボーイとして働いている。世間一般からはおかしな店にしか思われないだろうが、これだけの人間が存在すれば...

光を放つドレスを身に纏い、唇は真っ赤なグロスで染まっている。鏡に映っている見慣れない自分の姿を、僕はぼんやりと見つめた。店が開店する直前の今も、代役を務めるという実感がまだ湧かない。そもそも、僕のこの姿を気に入る男が居るのかどうか・・・・・・全てが未知だ。本来ならば接客を経験している男娼達から指導を受けるべきだが、僕は誰からも指導を受けなかった。オーナーから、口頭で基本的なルールについて教えられただけだ...

ある晩、店が開店して間も無くユンホさんが来店した。ユンホさんが来店した瞬間は、直ぐに分かった。彼が来たことを察知した男娼数人が、化粧室で騒ぎ始めたからだ。暫くすると化粧室のドアがノックされ、オーナーが顔を出した。「御曹司からご指名だぞ」オーナーがそう言うと、化粧室の空気が一変した。誰もが指名されたいという望みと、それを譲らんとする敵対心を露にする。緊張感が漂う中、唇を釣り上げたオーナーはゆっくりと...

甘い囁き、褒め言葉、心を揺さぶる熱い眼差し。それら全てが、この世界ではただの飾り物でしかない。こんな店に来る客に、真当な人間が一人でも紛れている訳が無かった。どうしてそれに気付かなかったんだろう。僕は甘い罠に嵌り、ひと時、幸せな夢を見せられただけだった。金曜の夜。僕は化粧と着替えを終え、ユンホさんが来店するその時を待っていた。ユンホさんを思い浮かべるとつい口が緩みそうになり、クールな表情を崩さない...

☆お詫びこの前は、ネガティブな記事を UP してしまい済みませんでした。取り乱す私と対照的に、何時もと変わらない事務所の宣伝、ツイッターの呟き、皆さんのお話の更新・・・・・・始め、どう気持ちを整理すれば良いのか分かりませんでした。でも、皆さんや周りの対応が正解なのだと思いました。何時も通りに過ごすことが一番平和で幸せ、そして冷静でいようとするのが大人の対応です。私が相談を持ちかけたある方が、気付かせてくださ...