X橋で会いましょう 1

俺の左胸には、生まれつき引っ掻いたような痣がある。着替えなどで素肌をさらす機会がある時は、その痣を見て誰もが驚いた。痣がコンプレックスで嫌になった時期もあったが、今ではそんなに気にすることも無くなった。そして特に、その意味を深く考えたことなど無かった。高校に入学して一年目。冬を越え春がやって来ようとしていた頃、俺は不思議な体験をした。海沿いにある、交差した大きな橋をご存じですか。あの橋は、我が国が...

X橋で会いましょう 2

浅い眠りだったのか、その夜俺は、久しぶりに夢を見た。俺は知らない部屋にいた。男が一人入ってきて、脱いだ背広をソファの背もたれにかけた。男に俺は見えていないらしく、こちらへは全く視線を寄越さない。俺は状況をひとつも理解せず、その光景をただ見守るように存在している。男が近づいて来て気が付いた。男の顔は何故か俺とそっくりだ。全く同じと言っていい。これは一体、どんな設定の世界なんだろう。ドアをノックする音...

X橋で会いましょう 3

歴史の授業の時間がやってきて、今日もまた教科書を開く。夢に出てきた男性は、教科書のチョン・イルホそのままだった。やはり俺は、彼の夢を見ていたのだ。「ジミンを下につけた後、イルホは経済や学業など多義に渡って大きく活躍し、更にその実力を周囲に知らしめました」先生が話している途中、隣の奴が俺の肩をつついてきた。「何?」「やっぱり……」まじまじと顔を見つめられて、俺は眉を寄せた。「何だよ」「お前、ジミンじゃ...

X橋で会いましょう 4

二人は正に最強のコンビ。カリスマ性を持ち、仕事に厳しいイルホに付いてゆくのは大変だった事でしょう。しかし、真面目で仕事熱心なジミンはイルホに気に入られていました。彼等は仕事の価値観が同じだったのかも知れませんね。そんな二人に、分裂の危機があったと言われています。明確な理由は解らないままですが、様々な言い伝えがあります。イルホの実力を恐れた組織の指揮官が、ジミンを引き抜こうとしたとか……ジミンがイルホ...

X橋で会いましょう 5

俺はイルホに気付かれないよう、自ら社長の元へ足を運んだ。「社長、指揮官との行為を私はこの目で確認しました。イルホさまを貶める様な真似は止めて下さい」「ジミン……お前から会いたいと言うから楽しみにしていたのに、そんなくだらない事を話しに来たのか」「お願いします。止めて下さい」俺は社長に向かって頭を下げた。「そうだな……。お前が何らかの形で私に奉仕してくれたら、考えてもいい」社長は厭らしい笑みを浮かべなが...